遺言・成年後見の法律相談
一般的に、どのような時に遺言・成年後見で弁護士に相談するのか。
遺言のご相談
遺言とは、人の死後にその意思を実現させるために制度化されたものです。一定の方式に従って定める最終的な意思表示で、死後にそれにより法的効果が与えられるものです。下記のようなケースでのご相談が考えられます。
- 子供たちが相続で争わないようにしたい
- 夫婦に子供がなく遺産をすべて妻に相続させたい
- 後妻と子供たちの間で感情的な対立がある
- 息子の妻にも遺産を相続させたい
- 未認知の子供にも遺産を相続させたい
- 内縁の妻にも遺産を相続させたい
- 相続人以外に、遺産を相続させたい人がいる
- 相続人がいないが、特定の人に遺産を相続させたい
- 特定の子供に、他より多くの遺産を相続させたい
- 生前贈与に差がついている
- 相続人に遺産を相続させたくない人がいる
- 家族に縁遠くなってしまった人がいる
- 個人企業を特定の相続人に継承させたい
- 相続人が未成年である
- 不動産など分割しにくい遺産の比率が高い
- 遺産を社会、地域や福祉活動などに役立てたい
- 遺産が、不動産、預貯金、株券、事業など多岐にわたっている
成年後見のご相談
成年後見は、判断能力がない状態の方について用意された制度で、法律面や生活面で保護、支援するものです。
下記のようなケースでのご相談が考えられます。
- 任意後見人を探しているが適当な人がいない
- 元気なうちに将来のことを決めておきたい
- 一人で暮らしている親が、認知症の兆候が少しあり不安だ
- 親の面倒をみて金銭の管理をしているが、兄弟から使い込みを疑われている
- 親族や知人に財産が狙われている
- すでに福祉施設に入所しており、不動産を処分したい
- 悪質なセールスから財産を守りたい
- 入院・福祉施設に入所中の財産管理が心配
- 相続人の中に認知症の人がいるため、遺産分割協議ができない
弁護士に遺言・成年後見の相談するのはなぜなのか(メリット)
遺言作成
遺言作成でホームページを検索すると行政書士や司法書士の方のホームページも多く出てきますが、基本的に行政書士は行政機関に提出する文書を作成することの専門家、司法書士は登記手続の専門家という位置付けになります。相続トラブルが発生して、他の相続人と交渉することや家庭裁判所の調停・審判に出席することが法律上認められているのは弁護士だけです。このように弁護士は紛争解決の専門家ですので、事前にどのような遺言書を作成すれば、相続トラブルが回避できるか想定してアドバイスをすることができます。
※司法書士・行政書士は調停、訴訟など家事事件の代理人にはなれません。ただし、法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所において取り扱うことができる民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)などについて、代理業務を行うことができます(簡裁訴訟代理等関係業務)。
成年後見
後見人の専門家としては弁護士、司法書士、社会福祉士等が一般的です。弁護士は司法書士や社会福祉士とは異なりどのような法律問題にも対応することができます。弁護士は紛争解決の専門家ですので、代理人として交渉することやトラブルの解決にあたることができます。何か問題が起きたときにも弁護士を後見人にしておけば安心だと思います。
遺言書で決められること
遺言としての法的効果が認められるのは、遺言事項という法律が定めた事項に限られます。
一般的に遺言できる事項は、民法、商法、信託法等の法律上可能とされているもの(認知、未成年後見人の指定・未成年後見監督人の指定、遺贈の減殺割合の指定、遺産分割の禁止、遺贈、相続人の廃除及び排除の取消、財団法人設立のための寄付行為、相続分の指定とその委託、特別受益の持戻し免除、遺産分割方法の指定・指定の委託、相続人相互間の担保責任の指定、遺言執行者の指定・指定の委託、祖先の祭祀主催者の指定、生命保険金の受取人の変更、信託の設定など)になります。
遺言書の種類
自筆証書遺言
最も簡単な遺言書の方式で、費用をかけずに作成することができます。
証人が不要なので、作成したことやその内容について秘密にすることができますが、法律で定められた一定の方式を満たしていない場合や、内容があいまいな場合には遺言が無効になることがあります。 遺言書の紛失や、遺言書の発見者にその存在を隠されたりする可能性もあります。
相続開始後に遺言書を家庭裁判所に提出し検認の手続きを受けなければなりません。
公正証書遺言
法的に信用があり、最も信用力があるのが公正証書遺言書です。
公証役場で証人2人以上の立会いのもとに遺言者から遺言の内容を聞き取って、公証人が作成する方式です。遺言の存在を秘密にする事は出来ませんが、正確な遺言書が作成できます。原本が公証役場に保存されるため、第三者に偽造、改ざんをされる恐れがありません。また、紛失しても再発行してもらえます。
相続開始の際に家庭裁判所の検認は必要ありません。
秘密証書遺言
遺言の内容を秘密にしながら、遺言書の存在を明確にできるものです。
あまり使われることはありませんが、遺言の内容を誰にも知られたくない場合に使われます。内容は秘密にできますが、遺言者が遺言の内容を記載した書面に署名押印をした上、封印をして公証役場に持参して証人2名が同席した上で、公証役場で作成することになりますが、そのときも遺言の内容は、証人にも公証人にも知られることはありません。秘密証書遺言書の原本は、公証役場で保管されません。
相続開始後に遺言書を家庭裁判所に提出し検認の手続きを受けなければなりません。
成年後見制度とは
成年後見制度は、痴呆症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分になった人の権利を守る制度です。社会生活を支援する人を家庭裁判所で定めてサポートが必要な人の意志を尊重しながら法律面や生活面でのサポートをします。本人を代理して契約などの法律行為をする、本人が自分で法律行為をするときに同意を与える、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消しすることにより保護・支援をします。成年後見制度には2種類があります。今現在すでに判断能力が十分でない人を支援する法定後見制度は、本人の判断能力により補助、保佐、後見の3類型に分かれ、現状に応じて家庭裁判所が補助人、保佐人、成年後見人を決定します。
本人に契約の締結に必要な判断能力があるうちに、将来の能力低下に備える任意後見制度は、自分が将来お願いする内容とそれを担ってもらう任意後見人を決めて公正証書で契約します。任意後見制度での家庭裁判所の関与は、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人を家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するのにとどまります。